文化ができること――平和への希望  by朝倉咲・古川理子


 みなさんこんにちは。ラボ生の朝倉と古川です。

アオバトでは記者班として戦争と平和に関するアンケートの記事を担当しました。今回はその中で本誌ではご紹介しきれなかった質問・回答を取り上げたいと思います。

 まずこのアンケートについてですが、「大学生に聞いてみました――安保・戦争・平和」と銘打ち、青学生に安全保障関連法を中心とした戦争と平和に関する意見や思いを聞きました。

 その中で、私たち総合文化政策学部としても関心が高い文化や芸術の力についても調査をしました。そちらをご紹介します。



Q6.世界の平和のために文化や芸術に貢献できることがあるとすれば、どのような点だと思いますか。具体的に挙げてください。

・食。(20歳、女性)

・スポーツ、絵画。(21歳、男性)

・戦争や政治に対して、直接するどい言葉で対抗するのではなく、絵や曲など違う形で優しく対抗する方が効力を持つ場合もある。(21歳、女性)

・分からない。(19歳、女性)

・国際交流。(20歳、女性)

・オリンピックやノーベル賞等の表彰など、武器を交えて争うのではなく、競う。(19歳、女性)

・W.P.A.展(*註)のように世界平和を訴えかけてきている芸術家たちを明るみにしていくような企画(20歳、男性)

・自分が思う「平和とは何か」についてのメッセージを継続して世界に発信し続けること自体が大切だと思う。(19歳、男性)

(*註)W.P.A展(世界平和芸術家協会展)とは、世界の平和を願う芸術家たちが社会貢献を目的として毎年新春に開催している展覧会のこと。毎年決められるテーマに沿って、日本画、書道などの日本の芸術はもちろん、洋画、彫刻、工芸、写真も展示され、バラエティに富んだ展示作品は150点にも及ぶ。


具体例をあげるのが難しい質問だったのではないかと回答を見て感じました。そこで私たちから「JR」というフランスのストリート・アーティストの活動についてご紹介します。


 彼は社会的困難に直面している人々の顔を撮影し、それをもとに作成したポスターをその街のあちこちに貼って、その地で起きている問題を世界に広める活動をしています。そのひとつに、紛争の最中にあるパレスチナとイスラエルの人々の顔写真を両国を隔てるヨルダン川の岸辺に展示した『Face 2 Face』という活動があります。長きに渡り争いを繰り返している両国ですが、顔写真だけではパレスチナ人かイスラエル人か分からないということをこの作品は伝えています。つまり同じ人間であることを発信し、争っていることに関して疑問を投げかけているのではないでしょうか。このように時には言葉ではなく、文化の柔らかい力が人々に強く訴えかけることもあるのだと思います。「JR」は2011年のTED賞を受賞しています。そちらのスピーチもぜひご覧下さい。

『JR』のプロジェクトについて記載されたサイトです。

(http://www.jr-art.net/projects/face-2-face)



 最後に、様々な分野が回答にあがっていましたが、それでもまだ考えや可能性を深められるのではないかと感じました。そう感じたのは、この質問の回答が他の質問の回答に比べて抽象的なものが多かったからだと思います。文化や芸術は人の心を癒やしたり、ふと考えさせるような力を持っているとも思います。また文化や芸術は国境を越え、広く人々を繋げるでしょう。この分野についてもっともっと模索していけば、平和に貢献する大きな手段のひとつになるのではないでしょうか。

 みなさんアンケートへのご協力ありがとうございました。ぜひ本誌もお手に取ってみてください。

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